『ハイ、撮りまーす・・・もう1枚撮りまーす・・・最後にもう1枚!』
仲居さんの掛け声に応えて、6人はそれぞれにポーズをとった。
『伊香保温泉 日本の名湯』。
ご存じ、上毛かるた『い』の札(ふだ)で詠まれる一文だが、桜の開花を間近
に控えたこの日、前橋六中出身の有志がここに集合した。
・・・キッカケは昨年のゴールデンウィークのある夜。
以前、このコラムにも登場した『やきとり・温々(ぬくぬく)』で、私を含めた幼なじみ数名が久々に顔を合わせた。
だいぶ酒も進み、皆が気持ち良くなった頃だったと思う。
『来年、全員が誕生日を迎えたあとの3月に、みんなで温泉にでも行かないかい?』
仲間内(うち)では一番早く誕生日を迎えるこの店の大将・カズヒデが切り出した。
『おお、それはいいねぇ!』『楽しそうだねぇ!』『賛成!』『オーケー!』
酔いも手伝ってか、全会一致で大将の案は承認された。
・・・中学卒業で一応の別れとなった同級生だが、カズヒデ大将が言う『みんな』は、折に触れて連絡を取り合い、近況なども確かめ合う関係を保ちながら、45年の月日を過ごした。
私が結婚した時、私の母親が亡くなった時、『みんな』は、それぞれに祝福してくれ、また、それぞれに悲しんでくれた。
思い出を語りだせば、ここには書き切れないが、私にとっては掛け替えのない、大切な仲間達である。
・・・そして、今年の3月27日。
『みんな』が同じ年になるのを待って、計画は実行された。
名所の石段を上り、温泉に浸かったあと、昔話や近況を語り合いながら、宴(うたげ)の時間はあっという間に過ぎていった。
冒頭の撮影により、6人は赤いチャンチャンコと頭巾のコスチュームで写真に納まった。
宴会場の入口には、『六中還暦温泉旅行様』と案内されていた。