『はい、まずは肩を回しましょう。』
『イチ、ニィ、サン、シィ。』 『ニィ、ニィ、サン、シィ。』
5月第3木曜日。
ここは、前橋市朝日町にあるトレーニングジム、Part of life(パート オブ ライフ)の一室である。
私は、安定したゴルフスイングに不可欠だと云われる「体幹力」を鍛えるため、昨年の7月から週1回のパーソナルトレーニングを受けていた。
パーソナルトレーニングをネットで調べると、
(個人1人に対し、トレーナー1人がマンツーマンでトレーニングやエクササイズ、食事などをトータルで指導してくれるサービス)とある。
始めてから9か月が経った今年3月のある日。
ジムは、『健康診断対策トレーニング』なるメニューを打ち出し、利用者にそれとなくPRした。
『健康診断対策』のフレーズは、正月に身に着けた贅肉(ぜいにく)を蓄(たくわ)えたまま、人間ドックを6月に控えていた私の心を揺さぶった。
そして、ご想像の通り、私はそれに食いついた。
ジム側の思惑通りである。
ここで、メニューの考案者でオーナーのイシザカ氏を紹介する。
有名ジムで技術と知識を習得した甘いマスクのイケメンで、学生時代は、フェンシングの選手だったという。
鍛え上げた筋肉のたくましさに加え、柔軟で俊敏な身のこなしが美しい。
・・・コーチに注ぐ私の視線に怪しさを感じ取られても面倒なので、本題に戻る。
イシザカコーチに頼み、4月からドックまでの2か月間だけ、主に有酸素運動を中心としたメニューに変更し、ペースも週2回に増やした。
正に一夜漬け、にわか受験勉強であるが、「藁(わら)にもすがる思い」とは、このことである。
『はい、ラスト5回! あと30秒です!』
甘いマスクのコーチは、今日も容赦のない笑顔で、私の鈍(なま)った体に鞭を打つ。
このコラムが印刷される頃、人間ドックの合否が発表される。