令和6年3月19日18時30分。
その宴はスタートした。
『12年と5か月、大変お世話になりました。』
この夜の主役は、CS(コミュニケーションスタッフ)リーダーのイチカワさん、通称:イッチーである。
スピーチの年月を当てはめると、彼女がダイキョーに入社したのは、平成23年10月となる。
そしていつ頃だったろうか、私は彼女をCSリーダーに抜擢した。
その後人員が増え、ピーク時のCSは8人に達した。
全体としてはチームとして成り立っているが、それぞれは独立した立場で仕事に当たっているダイキョーの中では、最多人数の部隊である。
笑顔、気遣い、ユーモア、思いやり・・・彼女は持ち合わせたすべてを駆使して、その大所帯を束ねた。
見事なリーダーシップだったことを思い出す。
こんなエピソードがあった。
ダイキョーでは月に一回、役員やリーダーが集まる会議が社長室で行われる。
その中で、出席していた女性スタッフに私が叱責を浴びせ、なんと泣かせてしまったのだ。
当然、会議は重苦しい雰囲気のまま終わったが、あとから聞いた話によると、イッチーは会議後、涙を流したスタッフをランチに誘って慰めてくれたそうである。
ちなみに、そのスタッフは、彼女の部下ではない。
そして、そのことを彼女は、私に対して一切アピールもせず、恩着せがましい態度など微塵も見せなかったのである。
私の彼女へ寄せる信頼がますます大きくなったのは言うまでもない。
彼女の退職はCSチームにとっても会社にとっても大きな痛手である。
しかし、その理由が彼女らしくて引き止められない。
在籍中には、個人的に悲しいこともあったようだが、今後の人生を共にする伴侶を得たのだという。
別れに際して、彼女からスタッフ全員にプレゼントが渡されたが、その包みが一つ多かった。
『イッチー、一つ多いよ!』彼女の盟友でもある、金庫番のフナツさんが言った。
『あっ、これは彼からです。』
フナツさんは、『ごちそうさま!』と言ったはずである。
新たな地でも発揮されるであろう、愛に溢れた彼女のリーダーシップが楽しみでならない。