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社長コラム

2023/11/01 その他

『長い夏と短い秋』

 9月の半ばを過ぎても尚、暑さが収まらず、(いったい、今年の夏はいつまで続くのだ!)と、私は、心の中で叫んでいた。

 このままでは半袖・短パンでゴルフをする私の手足はまだまだ黒くなるばかりである。

 それは、さておき。

 以前に読んだ時代小説の中で、上野(こうずけ)と呼ばれた頃の群馬の気候を『この地は500年の昔から、夏が終わるとすぐに冬の声が聞こえてくるというような、秋の短い風土であった。』と形容していたが、最近はその傾向に気温の上昇が重なっている。

 先日、プレーしたゴルフ場ではフェアウェーの土が剝き出しになっていた。

 50年前に県北部の山間(やまあい)に開場し、洋芝が敷き詰められたフェアウェーは冬でも青く、美しいコースだった。

 洋芝は暑さに弱いことは知られているが、当時のここは今よりずっと涼しかったのであろう。

 それが半世紀を過ぎた今年の夏、とうとう芝が溶けてしまったのだ。

 わが家の庭にある柿の木は、未だ青々とした葉を一枚も落とさずに茂らせているが、よく見るとその実は、ほんのりと色づき始めている。

 既に夏と秋が同居しているのだ。

 異変は、群馬だけではない。

 北海道では、鮭の漁獲量が減り、代わりに鰤(ぶり)のそれが増えているとテレビのニュースが取り上げていたが、ここではこの魚は馴染みが薄く、あまり高く売れないのだという。

 サケ漁で生計を立ててきた地元の漁師が、浮かぬ顔でインタビューに答えていた。

 しかし、である。

 今年の夏のように終わらない話を長々と述べている内、彼岸の明けと共に雨が降り出し、気温を10度も降下させた。

 すると、サンマ漁も昨年より大幅に増えたというニュースが入ってきた。

 『この時期はねぇ、一雨ごとに涼しくなるんだよ。』

 30年前に柿の木を植えた亡き母のセリフが甦(よみがえ)り、ハッとした。

 悪いことばかりを考えていても、埒(らち)が明かないのである。

 『暑さ寒さも彼岸まで。』

 私は、昔の人が言った良い言葉で10月をスタートさせることにした。

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