お盆明け、「もう少し涼しくなったら書き始めよう。」と高を括(くく)っていると、その暑さを保ったまま、8月が終わった。
9月第一月曜日。
私は朝から社長室に籠っていたが、何とも筆が進まず行き詰まり、ちょうどかかってきた電話を口実に外へ飛び出し車を発進させた。
お昼時だったこともあり、行きつけの『だるま寿司原之郷店』まで足を運んだ。
「暑さでコラムが書けなくて、困りましたよ。」
私は、ちらし寿司を注文し、お茶をすすりながら、カウンター越しのマスターに訴えた。
『それなら、暑くて書けねぇってことを書けばいいんじゃねえの。』
マスターは、いつも良いヒントをくれる。
・・・5年前、『記録的な暑さ』と言われた夏があった。
当時、朝のテレビでは、『今年は、9月いっぱいは夏だと思ってください。』と、気象予報士の男性が、声高に注意を呼びかけていた。
しかし今年は、その上を行く『観測史上最高』である。
北海道の学校には教室にクーラーが設置されていないそうだが、厳しい暑さのため授業にならず、休校を余儀なくされたという。
また、先日一緒にゴルフをした住設メーカーの営業所長が、『私が生まれ育ったのは、埼玉県寄居町ですが、そこはミカンが採れる北限だったんです。』と言っていた。
しかし今は、そこから50キロ北上したわが家の庭に甘いミカンが100個近く実をつける。
そのうち。
朝のテレビからは、『今年は、10月いっぱいは夏だと思ってください。』という声が聞こえ、北海道の家電量販店の棚にクーラーが並び、群馬県産のミカンが市場に出回る日がやってくるかもしれない。
・・・暑くて書けない話のおかげで、マス目が終わりに近づいた。
いずれにしても、この原稿は、真っ先にマスターに届けなければならない。