梅雨明け宣言から5日後の木曜日。
連日の猛暑に見舞われる中、高校野球群馬県予選の決勝が行われ、前橋商業が逆転サヨナラ勝ちで甲子園行きの切符を手にした。
このニュースは、原稿の見直しをしている最中(さなか)に飛び込んできたので冒頭に据えたが、本来書いていた文章は、このあとからである。
・・・夏至から数えて11日目の7月第一土曜日。
壁に掛かったカレンダーのコメント欄には『海開き・山開き』とあったが、関東地方はまだ梅雨の最中だった。
朝7時、『タオルが、くさーい!!』
そう叫んだのは、わが家の実力者で、いつもの土曜日より1時間早く起きた彼女は、わしづかみにしたタオルの束に鼻を近づけながら階段を下りてきた。
それらは雨降りだった前日、仕方なく部屋干ししたものだった。
洗濯をする者にとってこの時期の生乾き臭(しゅう)は、悩ましい問題である。
この日の天気予報は『晴れ』。
梅雨の合間のなんとやらである。
『もう一度洗い直しておいて!』
この日がショールーム当番だった彼女は、そう言い残すと、ブルーのSUV車に乗り込むや、鋭い出足で走り去って行った。
わが家では通常、1日で7枚のハンドタオルを使用し、それがそのまま洗濯物に変わる。
任務を負った私は、酸素系の漂白剤を多めに使い、洗い直しを含めた14枚のタオルをベランダに干しながら、「よく乾きますように!」と、軽く手を合わせた。
そのあとキッチンに戻り、食器を洗っていると、今度は携帯電話がブルルと震えた。
届いたメールには、『家の包丁を持ってきて!』と書かれていた。
ショールームでは恒例の包丁研ぎのサービスがあるためだが、次々に私に指示を飛ばす、わが家の実力者である。
家事をひと通り済ませた私は、包丁を新聞紙にくるみ、黒のセダン車に乗り、ゆっくりとわが家を後にした。
・・・最後に、この事は書かねばならない。
『公立高校の雄』前橋商業の優勝に称賛を贈ると共に、甲子園での活躍を心から祈る私である。