4月第三水曜日は、最高気温が26度に達する夏日であったが、夜の8時には20度近くまで下がっていた。
「まず、軽く腹ごしらえをしてからだな。」
社長室のソファーに腰掛けた私は、左手に魚肉ソーセージ、右手にミニサイズのマヨネーズを持ちながら、つぶやいた。
この組み合わせは、私が子供の頃から続いている「ヨシザワ家の常備食」である。
それはさておき。
夜の8時になって尚、仕事が残っていたのには訳があった。
・・・この前夜、仕事仲間の会合に出席した私は、そこでの酒が少々過ごし気味で、回復に午前中いっぱいを要してしまった。
そのため、この日最初の仕事を済ませただけで、時計の針は既に午後3時を回っていた。
「さてと。」
社長室に陣取り、二つ目の仕事に取り掛かる。
腰を据えてのデスクワークである。
月末が近づくにつれて、私が書くお礼状の枚数も増えてくる。
私のデスクには、30部くらいはあろうか、クリアファイルに入ったお礼状がずっしりと積まれていた。
全部仕上げるには、ざっと3時間は掛かる量である。
「さあ、やるぞ!」と、私は一心不乱にペンを走らせた。
そして、すべて書き上がったと同時に、マナーモードにしてあったスマホがブルルと震えた。
時計に目をやると、夜の6時だった。
電話の画面には、『お知らせ時間になりました』と表示されている。
「あっ、そうだった。」
数年前から私の予定はすべてスマホのカレンダーに書き込み、予定を入れる際は、その1時間前にアラームが鳴るように習慣づけている。
夜7時から始まる会議があったのだ。
会場は私の地元富士見町で、事務所から車で30分の場所だった。
「仕方ない、最後の仕事はそれからだ。」
そして、会議から戻ってくると、冒頭の時刻になっていたのである。
『ヨシザワ家の常備食』を腹に収めた私は元気を取り戻し、この原稿に取り掛かった。