2012/11/01
その他
千歳飴とワイン
この原稿を書きながらも、鈴虫の鳴き音とともに前夜の余韻を楽しんでいる秋の夜長です。前夜の余韻とは、親交20年の大工棟梁、ワリタさんの自宅に招かれたことです。彼自ら海釣りしてさばいた鯛の刺身をはじめとする数々の手料理をテーブルいっぱいに振舞ってもらい、私は大好きなワインを心行くまで味わったのです。
さて、今年も早や、紅葉や初冬と呼ばれる季節になりました。今月は文化、勤労感謝と、60年以上続く祝日が2日ありますが、子供向けの行事としては七五三が代表的でしょうか。女の子が7歳と3歳、男の子は5歳と3歳を祝うのだと調べたものに書いてありましたが、40代最後の1年を送っている私にも、そんな時期はあったのです。・・・古い写真には、上下お揃いのベストと半ズボンに蝶ネクタイ、髪をポマードできめた身長1メートルの私が、(気をつけ!)の姿勢で立っています。高校の卒業アルバムを開いても出てきますが、社会に出るまでの私は、カメラを向けられるとなぜか決まってこのポーズをとっていたようです。大人たちから余程、(気をつけ!)と言われていた子供時代だったのでしょう。写真の裏には『和男5歳、七五三祝い。』と、当時33歳だった母親が書いた文字が残っています。右手にはもちろん、千歳飴の袋を提げています。
この飴は、通常、水あめと砂糖を原料に作るものだそうですが、父親がお菓子職人だった私にはこの味は珍しくなく、あまりうれしくなかったことを思い出します。私が欲しかったのは、不二家のミルキーをベースにした練乳入りの千歳飴で、袋の中に望みの品を発見した時は、それはもう相当な目の輝きだったに違いありません。
・・・今年も、子供達の成長に感謝し、それを祝う良き日がやってきます。『ああ、七五三だなぁ。』とカレンダーをめくった私の目を、もし私の両親が見る事が出来たら、44年前のそれに似た光を見逃さなかったはずです。今年の11月15日は第3木曜日、ボジョレーヌーボーの解禁日でもあるのです。