2009/07/01
その他
チャンバラ
先日、事務所近くのお蕎麦屋で、まだ小さな女の子が店内に一人でいるのを見かけました。
彼女はその店の娘さんのようで、お父さんとお母さんは忙しく働いていて、とても構ってもらえない様子でした。
それでも、彼女はおもちゃを相手に機嫌よく遊んでいて、ちょっと感心して見ていました。
・・・話はまた40数年前・・・
お菓子職人の父親は、自宅を兼ねた仕事場で、ハッカ糖というお菓子を作っていました。
出来上がったお菓子を、袋詰めにするのが母親の役目で、商売を軌道に乗せるため、二人は毎日朝早くから夜遅くまで仕事をしていたようです。
その頃、私のブームはチャンバラで、農家の軒先に束ねて干してある桑の枝を抜き取り、近所の仲良しとよく斬り合っていました。
それでもみんな、お父さんが帰ってきて夕ご飯の時間になると『またねぇー』と言って家に帰ってしまったものです。
我が家の場合、ずっと父親は家にいますが、なかなか夕ご飯にはなりません。
私は、桑の枝をおもちゃの日本刀に持ち替え、庭で『ひとりチャンバラ』を始めることになります。
しばらく経つと仕事場をのぞき「お仕事終わる??」と聞くのです。
『もうちょっとねぇ』と母親から残業の知らせが出ると、父親から特別なサービスが付いたのを思い出します。
『ちょっと貸してごらん』と言って私の刀を腰に差し、一点を鋭く見つめ、スラリと抜いたと思うやビュッと一振り、そのまま静かに刀を鞘に収めて見せるのです。
そういうのにすぐシビレる私は、それを手本にまた、刀を抜いたり差したり暗くなるのも忘れて遊んでいたそうです。
・・・『お前は単純で扱いやすかったよ』と、カラオケ好きの母親は今でもよく笑い出すのです。